ランニング・自転車は水泳の代わりになる?|練習の目的と組み方
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プールに行けない日に、走ったり、自転車をこいだりする。そんな練習を水泳にどう生かせるのでしょうか。この記事では「体を動かし続ける力」と「水の中で泳ぐ動き」を分けて、練習の目的を考えます。
基本 体力づくりには共通点があり、泳ぐ動きには違いがある
ランニングや自転車は、プールに行けない日の体力づくりの選択肢になります。ただし、それだけで水泳の練習を全部置き換えられるとは言えません。陸上運動を扱った水泳の総説
何を練習したかった日かを考える
例えば、今日の目標が「運動する時間をつくる」なら、慣れているランニングや室内自転車を候補にできます。一方、「クロールの息継ぎを確かめる」が目標なら、その課題は次に泳げる日に残しておきましょう。
泳ぐときは、水に浮かびながら、腕・脚・呼吸のタイミングを合わせます。走るときは地面を踏み、自転車ではペダルを回します。体を動かす点は共通でも、練習している動きは違います。
泳げなかった距離を、走る時間に直さない
「走る30分は、水泳何m分?」という、誰にでも使える換算表は、今回確認した研究からは作れません。運動の種類だけでなく、慣れや取り組み方も違うからです。
記録には、泳いだ距離へ換算せず、「自転車を何分こいだか」「どれくらいきつかったか」をそのまま書きましょう。
次に泳ぐ日の様子も見る
陸上で運動した日も、練習した日の一つとして予定表に入れます。次に泳いだときに、疲れが残っていないか、確かめたかった動きに取り組めたかを振り返ります。
プールが休みだからといって、毎回ほかの運動で埋める必要はありません。その日の目的や体の様子を見て、休む日も予定に入れて構いません。
運動ごとの違いと予定の例は「標準」、研究で確認できたことは「研究」で説明します。
標準 泳げない日に、練習の目的を選び直す
ランニングや自転車を取り入れるときは、「今日は何をしたいか」を先に決めましょう。体力づくりのための運動と、息継ぎや水中姿勢を確かめる練習では、必要な動きが違います。
別の種目で行った練習の効果が、一部の持久力の指標に表れる可能性は総説で報告されています。ただし、そのことと水泳のタイムが同じように伸びることは別です。FACT 種目をまたぐ練習を扱った総説
動く場所と動き方を比べる
次の表は、クロール、ランニング、座ってこぐ室内自転車の動作を整理したものです。効果の順位や、同じ運動量を表す表ではありません。
| 見るところ | 水泳のクロール | ランニング | 室内自転車 |
|---|---|---|---|
| 体の支え | 水に浮かぶ | 足で地面を踏む | サドルやペダルなどで支える |
| 主な動き | 腕で水をかき、脚を動かす | 脚を交互に動かして進む | 脚でペダルを回す |
| 呼吸の場面 | 顔を水につける時間があり、息継ぎを動きと合わせる | 顔は水につけない | 顔は水につけない |
| 水泳で別に確かめること | 水中姿勢、息継ぎ、腕と脚のタイミング | 同じ水中動作を練習しているわけではない | 同じ水中動作を練習しているわけではない |
予定は三つの順で考える
- 泳ぐ日にしたかったことを書く。 「フォームを見てもらう」「運動を続ける時間をとる」など、目的を一つ選びます。
- その日にできることを選ぶ。 慣れた陸上運動をする、水泳の課題を次回に回す、休む、という選択肢を並べます。
- 次の水泳と一緒に振り返る。 陸上運動をした時間ときつさ、次に泳いだときの様子を記録します。
これは予定を整理する手順です。何分走れば泳ぐ力を保てる、と保証するメニューではありません。
例えば、木曜日に息継ぎを確認するつもりだったのに、プールが休みだったとします。慣れた室内自転車で体を動かす時間を取り、息継ぎの確認は次の水泳へ移せます。記録では「体を動かした」と「息継ぎを確認した」を分ければ、次に何をするかがわかります。
距離の換算より、実際にしたことを残す
| 陸上で行ったことと時間 | 自分が感じたきつさ | 次の水泳で確かめたいこと | 次に泳いだときの様子 |
|---|---|---|---|
| 自分の記録を記入 | 自分の言葉で記入 | 例:息継ぎのタイミング | 確認できたことを記入 |
きつさが同じでも、動きまで同じにはなりません。また、一度泳ぎが重かっただけで、その原因を陸上運動に決めつけず、睡眠など普段と違ったことも書いておくと振り返りに使えます。
よくある疑問
ランニングと自転車は、どちらが水泳に有利ですか。
今回の資料から、すべての泳者に共通する優劣は決められません。まずは目的、経験、使える場所で候補を絞ります。
脚を動かせば、キックの練習にもなりますか。
脚を使う点は共通ですが、地面を踏む、ペダルを回す、水を押す、という動きは異なります。キックの動きやタイミングは、水の中でも確かめましょう。
泳ぐ日を全部、陸上運動にしてもよいですか。
同じ泳力を保てるという根拠は、今回の確認では得られていません。「何を陸上で行い、何を次の水泳に残すか」を分けて考えます。
一週間の配置は①泳ぐ日と筋トレの日をどう組む?、陸上運動の種類はドライランドの記事、水中で確かめる動きはクロールのストローク・キック・呼吸の記事につながります。
研究 体力の変化と、水泳の成績を分けて読む
別の種目を取り入れる練習を「クロストレーニング」と呼びます。効果を読むときは、持久力の測定値が変わったのか、泳ぐタイムが変わったのかを区別します。さらに、水泳を続けながら陸上運動を追加する場合と、水泳を休んで置き換える場合も分ける必要があります。
持久力の指標だけで、泳ぐ速さは決められない
よく使われる指標のVO₂maxは、激しい運動中に体が1分あたりに取り込める酸素量の最大値です。1994年の総説は、種目をまたぐ効果と、その種目ならではの練習の重要性を論じています。今回確認したのは要約であり、古い総説一つから現代のマスターズ全員のメニューは決めません。FACT Tanaka 1994
陸上で測った体力の値が改善しても、それだけで水中姿勢、息継ぎ、ストロークの変化まで確認したことにはなりません。泳ぐ力を知りたい場合は、実際の水泳を測った研究かどうかを確認します。
水泳を測った研究にも、条件がある
エリートのトライアスロン選手4人を40週間追った研究では、数式で練習と成績の関係を調べ、ランニング・自転車と水泳の間では明確な転移を検出していません。これは少人数のモデル分析であり、「陸上運動は水泳に一切役立たない」と証明した試験ではありません。要約の範囲で参照しています。FACT Milletほか 2002
別の研究は、11週間の外出制限中に陸上トレーニングを行った競泳選手12人を調べています。200・300・400mのタイムは悪化した一方、50mなどでは統計的に明確な変化を検出していません。練習負荷も大幅に減っており、陸上運動だけを原因にできません。これも要約までの確認です。FACT Arsoniadisほか 2022
長期の施設閉鎖という条件は、普段の「プールに行けない一日」と違います。また、陸上トレーニングをまとめて調べた結果から、ランニングと自転車のどちらがよいかも決められません。
総説の提案と、実験で確かめた結果を区別する
2021年の水泳の総説は、プールが使えないときの候補にランニングや自転車を挙げています。ただし、著者らも、その状況での検証や泳力維持に必要な練習量の研究が不足すると述べています。実用上の提案を、泳力維持の保証として扱わないことが大切です。FACT Haddadほか 2021
2026年の系統的レビューは7件の試験をまとめていますが、対象はランニングと自転車です。水泳の成績は調べていません。群間に明確な差を検出しなかったことも、二つの運動の効果が同じという証明にはなりません。FACT Mengesほか 2026
自分の練習へつなげるとき
今回の資料からは、「ランニング何分で水泳何m分」「水泳を何回まで減らせる」という共通の数字は決められません。実践では、陸上運動の目的と内容を記録し、水泳に戻ったときの動きや成績を別に確かめます。
①泳ぐ日と筋トレの日をどう組む?と同じく、予定した運動量だけでなく、大切にしたい水泳練習に取り組めたかまで振り返る、という使い方ができます。